研究概要 |
まず,最大葉全域木問題に対する自己安定分散近似アルゴリズムを設計し,その正しさと性能を理論的に証明した.提案したアルゴリズムは一般のトポロジーのネットワークにおいて,近似比3を保証する.最大葉全域木は,その葉を刈り取ることで最小連結支配集合となり,無線ネットワークにおける通信のための仮想的なバックボーンとして用いることができる.すなわち,すべての計算機から1ホップでそのバックボーンに到達することが保証される.そのバックボーンの大きさが最小ならば,最小のエネルギー効率での通信が可能となる.提案アルゴリズムは,その自己安定性により,リンクやノードの一時故障を含むトポロジーの変化が起こっても,ネットワークの初期化をする必要がなく,自律的,適応的に変化に応じた解状況に収束することができる.これにより,無線ネットワークの不安定な通信にも適応できる.ただし,その収束時間は改善の余地があると思われ,任意の初期状況から解状況へ収束するまでの間は,何も保証されていない.つまり,収束するまでの間は最低限のサービスを行える状況にあるかどうかは保証がない.よって,収束期間中に何らかの最低限のサービスが行える状況を保証できるように変更することを考えている. また,分散システムにとって重要な問題の1つといえる資源配分問題がある.複数の計算機が複数種類の資源の中から同時にいくつかの資源を要求した場合に,どの計算機に割り当てるかという問題である.今回はトークンとコーラムシステムを用いたアルゴリズムの提案を行った,今後はこのアルゴリズムの自己安定化も考えている.
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