研究概要 |
本年度は,最大葉全域木問題について安全収束性を持つ自己安定分散近似アルゴリズムの設計を予定していたが,安全性としてどのような性質が適切かや,最小連結支配集合問題に対する解との違いを考えると新たな問題設定が難しく,まずは安全収束性を持たせるベースとなる自己安定分散近似アルゴリズム自体の性質の解明を急ぐ必要があるという結論に至った.本年度の成果としては,最小連結支配集合問題に対し,ユニットディスクグラフ上で安全収束性を持つ近似比6の自己安定分散近似アルゴリズムについてまとめた.今後,この解と最大葉全域木問題に対する近似比3の解の比較と,両アルゴリズムにおけるより細かい計算時間の解析が必要であると考えている. あちらこちらで次々と停止故障や一時故障が起こるような無線センサーネットワークにおける経路探索アルゴリズムを考えるために,既存の一般的なルーティング戦略のいくつかの代表的なものについて比較実験を行い,それぞれの戦略の良し悪しを分析した. また,記憶媒体を持たないロボットの集合問題に対して,対称な初期配置からでも集合できるアルゴリズムの提案を行った.ロボット同士は自身のカメラで他のロボットの配置を確認し,移動を行い,通常のような通信は行わない.これは各計算機の機能を極限まで絞り込んだ時にどこまでの事ができるのかという興味に基づいている.一般に無線センサーネットワークのセンサーノードの機能は限られているので,このテーマも無関係ではないと考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
最大葉全域木問題に対する自己安定分散近似アルゴリズムに対して安全収束性を持たせることを考えていたが,適切な最低限のサービスが提供できる実行可能解の設定が難しく,また最小連結支配集合による解と最大葉全域木問題による解のいずれが応用に適しているのかが不明なことから,申請した課題はその解明の後に考えるべきであるという結論を得,現在,それを実験的に解明しようとしている.
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今後の研究の推進方策 |
まず,最大葉全域木問題の近似比3の解によってできる葉以外の部分と,最小連結支配集合問題の近似比6の解の大きさを比較し,いずれか小さい方を最適解,大きい方を実行可能解とするような安全収束自己安定アルゴリズムを考えていく.また,収束時間の解析として,これまでラウンド同期を仮定した大まかな計算時間しか見積もっていなかったので,より細かい分析を両アルゴリズムに対して行うことによって,適切な問題設定,つまり安全性として満たすべき性質を模索する.
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