研究概要 |
農場のように電源がとれない環境においては,無線センサーネットワークの利用可能時間を長くすることが重要な課題となっている.センサノードの電力消費抑制のためには,消費電力の主要因である送信電力の削減が有効となる.そこで,移動シンク(シンク:データ収集ノードのこと)を利用し通信回数を削減させる研究が行われている.中でも,移動シンクが固定経路を巡回するという前提で経路近辺のセンサノードをクラスタノードとしてツリー構造を構築する手法は,電力削減効果が大きいが移動シンクの巡回頻度により遅延が増大する場合がある.これまで遅延に関しては,あまり重要視されてきていなかったが,今後リアルタイムに農場の状況を把握したいという要求に対しては,遅延が重要となってくる.そこで,移動シンクを利用した無線センサネットワークにおいて,アプリケーションが要求する許容遅延時間内にデータを収集しつつ,通信回数を抑制するデータ収集方式を提案する.提案では,データの通信回数をできる限り少なくするためにセンサノードは移動シンクがデータを回収しにくるまで待つが,許容遅延時間内に回収が望めない場合はデータを回収が望めるセンサノードに転送する方法をとる.センサノードは移動シンクと次に接触する時間を予測するために、移動シンクとの過去の接触履歴を一定量メモリに保存しておき,移動シンクとの接触確率(収集確率)を算出する.各ノードは,一定時間毎に収集確率を求め,閾値を境にデータをバッファに蓄積しておくか,転送するかを判断する.データを転送する場合は,通信範囲内の近隣ノードにデータの許容遅延時間を含む制御パケットを送信し,収集確率の返信を待つ.近隣ノードに自身の収集確率より大きな収集確率を持つセンサノードが存在すれば,そのセンサノードにデータを送信する.今後は,提案方式に関して,シミュレーションにより性能評価を行っていく予定である.
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