研究課題/領域番号 |
22700076
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
荒川 豊 九州大学, 大学院・システム情報科学研究院, 助教 (30424203)
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キーワード | エナジーハーベスト / すれ違い通信 / 疎密 / センサーネットワーク / 農業 / 超音波 |
研究概要 |
自然エネルギーで駆動するエナジーハーベストセンサーネットワークを実現することを目的として、本年度は、大きく以下の2つの課題に取り組んだ。我々の研究は、広大な農場にセシサーが疎密に配置されている状況を想定している。これは、茶畑農家などに実際にヒアリングした結果に基づいており、実際の環境では過去のセンサーネットワークの研究で前提とされるセンサ間めアドホック通信が成り立たないことを意味している。そこで、疎密に配置されたセンサー間をシンクノードが移動することによってデータを収集する移動シンク型センサーネットワークに着目している。1つ目の研究課題として、この移動シンク型センサーネットワークにおいて、データの遅延制約を考慮したデータ転送方式について、ネットワークシミューレータQualnetを用いた性能評価を行った。提案方式は、センシングデータの鮮度を保つためデータに遅延制約がもうけられている状況を想定し、遅延制約を守りつつ,消費電力を最小化する。評価の結果、従来方式と比較して、23%消費電力を低減できることを示した。また、2つ目の研究課題として、すれ違い時にデータを送るための仕組みに関して、実装および実験を含めた検証を行った。センサーノードは消費電力を低減するためにLow Duty Cycleと呼ばれる動作モードで動いており、大半をスリープ状態で過ごしている。そのため、移動シンクが近づいた際に、スリープを解除する仕組みが必要であるが、そこで多くの電力を消費する訳にはいかないため、センサーノードよりも低消費電力で駆動するウェクアップモジュールが必要である。我々は、さまざまな検討を経て、超音波センサーに決定し、Xbeeモジュールを搭載したセンサーノードに超音波セシサーを追加し、すれ違いによりセンサーノードを起動しデータを送受信できるかを検証した。実環境(農場)において、超音波センサーの取り付け角を変化させながら実験した結果、Wakeupはもちろん、十分なデータ通信が行えることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画の通り、1年目でさまざまな検討と方針の決定を行い、本年度(2年目)ではすれ違い通信に関して、シミュレーションによる性能評価はもちろん、実際にエナジーハーベストセンサーノードを試作し、低消費電力な超音波を使って、すれ違いによるWake upが可能であることを確認できたシミュレーションにより理論的な評価だけ無く、次年度に向けてハードウェアに関しても実験基盤ができたということで、純情に推移していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
現在、シミュレーションで評価した方式は、遅延制約付きルーティングに重きを置いており、実際に制作したハードウェア(超音波を使ったWake up方式)や実環境での自然エネルギーの推移は考慮されていない。最終年度では、より実用性を高めるために、それらを考慮した性能評価を行うとともに、試作ノードの台数を増やし、実環境において、総合的にどの程度データを収集可能であるか、気候にどの程度影響を受けるかを分析し、システムにフィードバックする予定である。また、成果として、論文や国際会議にも投稿予定である。
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