農場など広域な環境にセンサーが粗密に配置された環境において、低コストかつ永続的なセンシングを実現することを目的として、本年度は、大きく以下の2つの課題に取り組んだ。 1つ目は、昨年度Alkasと呼ばれるやや高価なハードウェアを用いて実装していたセンサーノードを、より低コストなArduinoプラットフォームに移植すると共に、実際に農場に設置して、データを継続的に取得する実験を行った。Arduinoは数千円で購入可能な汎用マイコンボードであり、今回、我々の提案する超音波センサによるウェイクアップシステムとすれ違い通信を搭載したセンサーノードも移植に成功したことによって、大幅なコストダウンを実現できた。しかしながら、実際に農場に設置すると、霜などの影響で動作が安定しないことなども明らかになり、実用化を見すえた場合の課題も顕在化してきた。 2つめは、自然エネルギーで駆動するエナジーハーベストセンサーネットワークを実現することを目的として、太陽光発電パネルと船舶向け風力発電のハイブリッド回路により上記Arduinoを永続的に駆動可能な回路を設計した。平均日照時間や風力発電の平均値を元にした消費電力見積もりの結果、提案回路はArduinoを自然エネルギーだけで半永久的に駆動可能であることを明らかにした。ただし、実環境では、両発電モジュールからの電力をいったん蓄積する蓄電池の劣化が激しく、実用化に向けてはバッテリーの選定、改善も必要であることが明らかになった。また、見積時には平均を用いているため、今後、連続的な天候不順なども考慮して行く必要があると考えられる。
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