昨年度に引き続き、XML文書などの木構造データの変換における問合せ保存性の決定可能性についての調査を行った。 まず、変換が一価性線形拡張ボトムアップ木変換器(sl-XBOT)、問合せが一価性ボトムアップ木変換器(s-BOT)で表現されるときに、変換が問合せを保存するかどうかが決定可能であることを証明した。昨年度は、変換・問合せともに正規先読み付き決定性線形トップダウン木変換器(DLTR)で表現される場合に問合せ保存が決定可能であることを示したが、sl-XBOTおよびs-BOTはDLTRよりも真に大きいクラスである。こちらの成果は国際会議LATA2013に採択された。 また、問合せを、木から木への関数ではなく、木から頂点の集合(あるいは頂点の組集合)への関数とした場合における問合せ保存性について検討を行った。頂点問合せとしてはXPathなどが挙げられる。本研究では、問合せクラスとして、単項二階述語論理(MSO)と呼ばれる高い問合せ能力をもつクラスと同等である、n-項受理実行問合せと呼ばれる木オートマトンを用いて表現されるクラスを採用した。その上で、各頂点がデータ値をもつ木を対象とし、変換前の任意の木についてその木に対する問合せ結果である頂点がもつデータ値(の組)が、変換後の木において同等のクラスの問合せで取り出せるかどうかの判定問題について調査を行った。そして、変換クラスをDLTRとした場合に、ある条件下のもとでそのような問合せ保存性が決定可能であることを示した。
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