研究概要 |
感情解析および物の存在性解析について手法の確立および知識ベースの整備を目的とした.1つは,文章から感情を推定する際に必要となる「物事への価値判断」を行う手法の確立である.コーパスの参照方法を工夫することで安定した解を得ることを目的とする.もう1つは物の存在性を解析するための知識ベースの作成および関連手法を追実験するためのコーパスの作成である. 前者の結果は次のとおりである.物事に対する「危険性-安全性」,「違法性-合法性」について一般的な価値観を算出する方法,および,「生理/目標実現/対人関係」の観点から「接近-乖離」について一般的な価値観を算出する方法を確立した.例えば,「自転車に乗る際,片手運転は危険だ」という当然の事柄を得る方法,「夏には冷たい飲み物が生理的に受け入れられる」という健常な多くの人が日常において思うことを得る方法である.「接近-乖離」については感情推定の性能向上が確認できた. 後者の結果は次のとおりである.まずコーパスの整備を進めた結果,系列ラベリングの方法に習って,存在する物およびその場所の記述を文章から抽出すること,および,SVMを用いて,物と場所の対応を識別することという機械学習に基づく方法を適用することができた.その結果,実務的には有効性のある情報抽出に応用可能であることが分かった.次に知識ベース化については日本語語彙大系の用言パターンの全て(14,819件)に対して,存在する物およびその場所を表す表現部分を特定する知識を組み込んだ.動詞の意味を直前・最中・完了の3つの時点に分けて考察することで,知識化の作業を効率的に進めることが可能となった.存在性に対する言明は,3つの時点の合計で約25,000件となった.
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