本研究年度における研究実施内容は以下の通りである。まず、前研究年度までの基礎技術研究の成果をまとめ国際学会誌へ論文投稿を行っていたもの1報が、本研究年度中に修正の後採択され、掲載および出版された。 上記前研究年度までの成果に基づき、本研究年度においてはメタボールの描画アルゴリズムの応用的な研究を実施した。特に本研究課題の分野と関連して、デジタルファブリケーション的なアプローチが近年注目を集めており、同アプローチは本研究課題においても有効であることが前年度の関連学会視察等を通じて明確となっている。そこで本研究年度においては、3Dプリンタ等を使用した形状出力に適したデータ生成を試み、実体物としての建築装飾等へ応用可能な造形アプローチを探る試みを行った。具体的に、同分野で広く用いられるSTL形式で形状データを出力するため、メタボールから直接頂点データを書き出す方法や、様々なソフトウェアを経由する方法などの比較検討を行った。同時に、装飾に適したメタボールの融合状態を探る実験も並行しており、特殊な濃度分布形状を用いた描画実験を実施し、旧来のメタボールより複雑度の高い(描線要素の多い)融合形状を得ることに成功している。 上記内容に関連し、当該研究分野において最先端の技術発表・展示が行われる国際会議である SIGGRAPH2011(米国)やADADA2011(北九州)に参加し、コンピュータ・グラフィックスにおける手続記述法に関するアルゴリズムの調査を行うとともに、他の研究者との意見交換を行い、特に建築物など人工物に関する手続的描画技法の研究に関して多くの知見を得ることができた。
|