研究概要 |
現在,豪雨による山の斜面崩壊が問題となっている.斜面上に敷設したセンサネットワークを介して地中の間隙水圧値を取得・分析し,崩壊の予兆を検知するシステムが研究されているが,運用コストが大きいという問題がある.本研究では,(a)ネットワークノードの電池寿命長化,(b)故障・不通発見時の現地対応時期調整,(c)斜面崩壊予兆の判定基準の自動推薦の三つにより運用コストを削減する. 平成23年度の計画では,(a)-(c)について,実データでの評価に基づいて手法を提案する.しかしながら,評価に必要な適切な斜面のセンサデータ(以下研究対象データと呼ぶ)の取得が困難という知見が得られた.崩壊の予兆が存在する時,および存在しないときのデータが必要であるが,我々が運用したセンサネットワークはネットワーク運用の実現可能性を確認するプロトタイプであり,斜面崩壊が発生しない斜面で運用していた.そのため,代替データを選定して評価を行い,今後はこの代替データを用いることとした. 結果として平成23年度は(b)について,平成22年度までの成果を拡張し改善した.代替データと研究対象データの共通する性質である(1)センサ値が互いに関連する可能性があるセンサネットワークである,(2)センサデータによって特定の状況を検出できる,(3)全てのセンサデータを状況検出に用いる必要があるとは限らない,という性質を用いた運用コスト削減のための手法を考えた.検出対象状況を他のセンサによって推定し,当該センサのセンサデータと類似した変化をするセンサデータを持つセンサノード群を検出することで,必要なセンサノードのみを抽出する.これを斜面崩壊の予兆検知に適用する場合,予兆を直接検知できるセンサは利用できないため,例えば他の斜面で予兆が発見されたときに特徴的な変化を行った水分量のデータなどを比較用のセンサデータとして用いることが考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では,斜面崩壊の予兆検知のためのセンサネットワークから得られた実際のセンサデータを評価に用いつつ,運用コスト削減手法を開発することを目指していた.しかし,実際のセンサデータでは斜面崩壊の予兆がなく,類似した代替データを用いざるを得なかった.まず斜面崩壊予兆検知のためのセンサデータと,代替データの共通する性質のみを利用した手法開発を行うことになったため,当初からやや遅れる形となった.
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今後の研究の推進方策 |
今後上記代替データを用いて(a)-(c)の手法を提案する研究を特に(b)について継続する.ただし,代替データの性質が厳密に斜面上のセンサデータと一致するとは限らないため,代替データと斜面上のセンサデータの共通する性質を選定し,それに基づいて,9.研究実績の概要で述べた手法(a)-(c)を開発する.これにあたり,将来の斜面上のセンサデータへの拡張性についても検討する.
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