研究概要 |
アイゲンミュージックとは,大量のMIDI楽曲から得られた特徴であり,計算機による自動作曲や編曲への応用を想定したものである.本年度は約5000曲ものポピュラー音楽のMIDI情報から,それに含まれるベースパートに関する特徴を抽出し,それを用いた自動編曲を行なった.ここで得られた特徴はベースパートからなるMIDIトラックから得られたものであり,アイゲンフレーズと呼ばれるものである.ベースパートに関するアイゲンフレーズは,オンセット位置,ノートハイト,ヴェロシティの特徴に分割される.対象とした楽曲は,4/4拍子の楽曲から1小節の長さの音列とし,16分音符でクオンタイズされた状態を用いる.それら3つの特徴ごとにベクトル表現されたものを全パタンだけ用いて,主成分分析を行なうことで得られたベクトルをアイゲンフレーズとして採用する.得られたアイゲンフレーズは,用いた楽曲から得られた平均的特徴を表していると考えられる.アイゲンフレーズを用いることで,たとえば対象とするフレーズの特徴が得られ,かつ得られたアイゲンフレーズを用いて自動作曲が可能となる.具体的には,ポピュラー音楽を対象として,自動編曲を行なったものを被験者に聞かせ,その印象を評価させたところ,アイゲンフレーズを用いた編曲は人間による編曲に近い品質を持つことが示された.よって,その妥当性が確認できた.またこれの応用として,ドラム演奏の熟達度の自動評価において,アイゲンフレーズの利用可能性について検討した.具体的には,ドラムループ演奏と呼ばれる短い演奏についての評価を行なう際に,演奏された譜面の特徴と熟達度に関係が考えられるため,楽譜と演奏の類似度の評価に用いることを検討した.その結果,類似度をアイゲンフレーズによって評価することで,類似度を適切に評価できる可能性が示唆され,来年度でそれを実施することにした.
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