動画像における画像改ざんの新検出法の開発を本研究の目的とする。本研究では、半導体撮像素子の電気特性のばらつきに起因する個体特徴を利用して、改ざんの有無並びに改ざんの時空間位置の特定を行う。本年度は撮影カメラが既知の場合について、動画像から抽出される素子の個体特徴パターンの時空間変動を調べることで改ざんの有無を判定できるか基礎実験を行った。改ざんされた動画像として以下の3種類を作成し、実験した。 1撮影カメラと同機種かつ別個体のカメラで撮影された映像シーンに部分的に差し替えが行われた動画 2車両ナンバープレート数字の書き換えが行われた動画 3周囲テクスチャの貼り付けにより特定フレーム中の物体が消去された動画 動画像中の各フレームに記録されている撮像素子の個体特徴の抽出には、各フレーム画像のガウシアン・フィルタリング画像との差分画像に対して、画像の水平及び垂直の各ラインのDC成分をカットするハイパス・フィルタを使用した。抽出された撮像素子の個体特徴の時間変動並びに空間変動を調べることで、いずれの評価動画についても画像改ざんの検出が行える可能性が示された。画像や映像が犯罪捜査に正しく活用され、その証拠能力や証明力を維持するためには、画像合成などの改ざんが行われたりCGによる画像生成が行われていた場合に検知できる技術が不可欠であると考えられ、それを実現する1手法として本実験結果は重要な意義を持つと考えられる。 撮影カメラが未知の場合の検出手法の開発と、動画圧縮の影響の検討が来年度以降の課題である。
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