動画像における画像改ざんの新検出法の開発を本研究の目的とする。本研究では、半導体撮像素子の電気特性のばらつきに起因する個体特徴を利用して、改ざんの有無並びに改ざんの時空間位置の特定を行う。 前年度までに、撮影カメラが既知の場合について、動画像から抽出される素子の個体特徴パターンの時空間変動を調べることで改ざんの有無を判定する手法の開発を行ってきた。本年度は、撮影カメラが未知の場合でもシーン挿入を検知可能な方法を新たに開発した。この方法は、未知の入力動画に対してシーン毎の分割を行い、各シーンの平均画像から固定パターン雑音成分を抽出し、シーン相互に類似性を評価することで挿入シーンを検出するものである。USBカメラで撮影された未圧縮の評価映像に対して実験し本手法の有効性を確認したほか、DVコーデックによる動画圧縮に対して頑健であることも確認できた。ただし、MPEG-2やH.264のような圧縮コーデックに対しては影響が見られ、検出性能が大きく低下した。 また、動画像から撮像素子の電気特性のばらつきに起因する個体特徴パターンを抽出するためのフィルタについても比較検討した。これまで利用していたBlur Filterに加えて、Bilateral FilterやNon-Local Means Filterを利用して個体特徴パターンを抽出し、改ざん検出性能への影響を調べた。その結果、従来のフィルタでは性能が大きく低下したコンテンツ変化の少ない動画に対して、Non-Local Means Filterを利用した場合に性能が大きく改善することが確認できた。 さらに、半導体撮像素子の電気特性の画素ごとのばらつきとして、暗電流に起因するパターン(DCNU)と光電変換効率に起因するパターン(PRNU)を併用するハイブリッド識別法についても提案を行い、有効性を確認した。
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