研究概要 |
学習者が実世界の中で体験を行い,実世界に根ざした知識を得る実世界学習の重要性が指摘されている.教室学習とは異なり,実世界学習は,空間的広がりをもつ実世界との相互作用を通してなされる点に特徴がある.よって,実世界学習において相互作用や学習効果を引き出す鍵は,実世界に他ならない。H23年度は,情報機器(ウェアラブル型センサ,小型情報端末,体験記録装置など)を用いたセンサネットワークシステムで,実世界学習者の行動情報を高精度で計測・収集し,マルチモーダルなデータをもとに,学習状況を分析できる技術を開発した.具体的には,ユビキタスセンシングおよび知識外化の技術により,「実世界学習の場が,どのように多様な学習を引き出すか」という,場の空間特性を抽出する分析技術を開発した.H23年度は,以下の3つのアプローチを基軸として,研究を実施した. ○アプローチ1: 学習者が得た情報や知識の内容とその獲得過程を分析可能とするために,知識外化技術およびデータ解析手法を開発. ○アプローチ2: 学習状況の時系列変化を把握するために,ユビキタスセンシング技術によって,学習者の体験(発話,視界,行動)を観測する技術,および,データ解析手法を開発. ○アプローチ3: 知識と体験の両面から相補的に学習状況を観測した結果(アプローチ1,2)を,場所情報を軸に分析,そして,実世界の各空間領域が引き出した,多様な知識活動の内容や量を,分析し,実世界の場がもつ空間特性を明らかにする技術を開発. このような多様な知識活動を捉えるための分析技術は,学習者と実世界における相互作用をより効果的な形態へと再設計する際に,礎となる,したがって,このような分析技術の開発は,学習支援の高度化に向けて,重要性が高い.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画の通りに,研究を実施でき,原著論文1件,国際会議2件,国内研究会1件の研究成果を得た.また,IEEEWMUTE2012国際会議(査読付き)でBest paper award(最優秀論文賞)を受賞した.研究成果は順調であり,概ね順調に研究が進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度であるH24年度は,これまでに開発した技術を発展させ,更なる技術開発,評価実験につなげる.例えば,「実世界学習の場が,どのように多様な学習を引き出すか」という実世界知識を定量的に表現し,コンテクストアウェアシステムを駆動するためのフレームワークを開発する.また,評価実験によって,提案手法の有効性を検証する.
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