今年度は、主に以下の研究を進めた。 まず、素材の形状の制御による実体ディスプレイである。具体的には、アレイ状に配置されたシャボン膜の膨張・収縮を利用した透明実体ディスプレイShaboned Displayに関して検討を進めた。これまで開発してきたシャボン膜の生成装置の仕組みを見直し、より小型かつ簡易な機構で膜を生成するシステムを構築した。また、1ピクセルずつ個別に配置・コントロールできるモジュールを作成し、空間に合わせた設置や様々なスケールでの展示を可能にした。本システムは、対外的展示を行い、鑑賞者の反応や印象に関するフィードバックを集めた。さらに、このシャボン膜のディスプレイに対するユーザの反応をまとめ、AHFE International Conferenceにて発表を行った。 また、同様に素材の膨張・収縮を用いるシステムとして、風船を用いた実体ディスプレイの開発を行った。これは、プロジェクタなどの光学機器を用いることなく、素材特性を用いて色表現を行うシステムである。このために、表と裏に異なる色を持つゴム風船を膨張させることで、収縮時とは異なる色が現れるという原理を利用し、アレイ状に配置した風船の膨張・収縮をピクセルと見なしたディスプレイシステムを提案した。具体的には、風船を物理的に挟んで膨張させる機構、空気により膨張させる機構などを試し、その動作確認および耐久性などの検証を行った。この装置も対外展示を行い、鑑賞者から「つい触れたくなる」「生き物のように見える」などの反応を得た。 さらに、入力(形状検出)と出力(形状制御)を両方兼ね合わせた装置として、このシステムを拡張し、素材内部における気圧をセンサで測定することにより、ユーザの指で素材を押し込むなどの入力動作を検知するための機構に関して検討を行った。
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