変形する対象物のモデル化と表現の実現は古くからCGの領域で多くの研究がなされ、最近では力覚を伴うインタラクションの実現が検討されている。力覚提示の実現には1kHz程度以上の更新レートが必要であるとされるが、上述の力学的シミュレーションを実用的な解像度のモデルについて実時間実行することは難しい。これまでに様々なアプローチが提案されてきたが、いずれのアプローチについても十分な規模の仮想柔軟体を実時間でシミュレートするまでには至っていなかった。 一方、仮想柔軟体を対象とした遠隔間の仮想世界共有は、特にVRと医学の複合領域で遠隔協働手術シミュレーションを対象として研究がなされてきた。しかしながらいずれも共有される仮想柔軟体は小規模にとどまっており、大規模仮想柔軟体を遠隔で共有する研究はなされていなかった。 本研究の目的は、遠隔多地点間において大規模仮想柔軟体(ノード数3万以上)を共有可能かつ視力覚的な相互インタラクションを可能とする、遠隔協働環境の基盤となる手法を確立することである。 本年度は、1)メッシュの空間解像度・シミュレーションの時間解像度を動的に変更しながら変形計算を行う手法の検討・実装、2)適応的変形モデルとインパルス応答変形モデルとを接続する、階層型変形モデルの検討・実装、3)遠隔2地点間で、変形状態・適応化の状態・トポロジ変化の状態を低い通信コストで効率的に同期を行うことが可能な、適応的変形モデルのツリーの特性を活用した共有アルゴリズムの検討・実装を行った。
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