研究概要 |
本研究課題では,人工知能の判断力が高度に訓練された人間の判断力に追いついた分野を対象に,計算機を用いて人間の判断を支援する手法を研究した.様々な状況で人間が判断を行う場合,現在の状況を認識し,起こりうる未来を予想し,起こりうる未来を比較検討したうえでどの行動を行うかを決定するとモデル化できる場合が多い.適切な判断を行うためには,それらすべてが正確である必要がある.本応募課題では,そのようなモデル化に基づいて計算機による分析を行い,未来予測の支援と,分析・判断の支援の両方を効果的に行うことを研究した.研究の題材としては,将棋・囲碁のような思考ゲームを選んだ.具体的には,公開されている棋譜の指手と計算機の判断の一致不一致の調査とその原因の解明に取り組み,人間の重視する判断基準と計算機のモデル(MinMax探索における評価値やモンテカルロ木探索の判断する勝率)との差をどのように扱うべきかについて知見を得た.これまでの成果の一部は,実際に試行中の将棋のリアルタイム解説システムに活用されており,実用性のさらなる向上が次の課題となる.ソフトウェアとしての成果は,引き続きオープンソースライブラリとして公開中であり,引き続き拡充予定である.研究期間が終了した後のことであるが,2013年4月に行われた将棋の電王戦第五局においてコンピュータ将棋の思考を可視化した試みが好評だったように,本研究課題を踏まえて更に発展させることは人とコンピュータの知的なコミュニケーションのありかたを探るうえで、継続して深めるべき重要なテーマである。
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