研究概要 |
当初設定した研究計画に基づき,以下に示す2つの研究課題に取り組んだ. 1.CF帰納法に基づく仮説枚挙システムの実現とその高度化: 昨年度に提案した逆伴意法から逆包摂法への論理的変形技法をまとめた(Journal of Machine Learningに採録).また逆包摂法に基づくCF帰納法を実装し,その評価実験を行なった.本研究の成果は当該分野め国際会議の一つであるInt.Conf.on Inductive Logic Programming (ILP2011)において発表し,Revised and selected papersの一つとして採択された.さらに高度化に関わる研究として,CF帰納法の手続き中で必要となるプール式のDNF-CNF変換処理について効率化手法を考案した.本成果は人工知能全国大会(JSAI2011)にて発表した.この効率化手法はCF帰納法の実装システムに導入されている. 2.帰納推論技術による酵母菌のグルコース抑制に関する知識発見: 昨年度に実施した論理モデルの精密化に関する予備実験の結果をまとめ,人工知能全国大会(JSAI2011)にて発表した.また観測となる遺伝子発現データと背景理論となる論理モデルを正しく理解し解釈するため,酵母菌の専門家である研究協力者と複数回の研究打合せをもった.その結果,論理モデルの他に専門家が持っている潜在的な背景知識を用いることで,予想より多くの観測データが説明できることがわかった.一方で,説明できない観測データについては何らかの遺伝子転写因子が欠落していることが予想されるが,その候補となる因子(仮説)は,生化学データベース(yeastract)を元に絞り込めることもわかった.論理モデルと観測データの理解と解釈を深め,知識発見に向けた課題の洗い出しを行なった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
課題1の「仮説枚挙システムの実現とその高度化」についてはおおむね順調に進展しているが,課題2の「酵母菌のグルコース抑制に関する知識発見」については,当初の計画では本年度から仮説枚挙システムによる実験と仮説検証のサイクルを回す予定だったが,実際には専門家との打ち合わせを行い問題の洗い出しをするところまでに留まっている.このため(3)とした.
|