研究概要 |
本年度は,昨年度までに実装を進めた複数ユニットオークションに対応したプロトタイプアルゴリズムおよびその実装をベースに,電力や環境物質排出権取引問題等のモデルへの適用を進め,大規模シミュレータへの適用や,そのために必要となる大規模コンピューティングインフラ(クラウドや汎用グラフィックプロセッサ)の活用方法の検討を進めることを,大きな目標とした.また,それらの必要に応じて,アルゴリズムやメカニズムの改良および性能評価を随時行うこととした. これまでに,複数ユニットオークションに対応したプロトタイプアルゴリズムについては,価格付け機構を含めて,比較的順調にその開発が進んでいると考えられたことから,その理論・実装性能の解析結果を中心に,可能な範囲で国内あるいは海外の学会にて,随時成果の公表を行い,関連する研究者からのフィードバックを得られるようにした. また,本研究と並行して,短時間で市場メカニズムを用いたアプリケーションを試作するためのインフラ技術として,ウェブ上の種々の技術を連携させることを可能とする基盤技術の改良と調整を行ってきた.本技術を,昨年度までに開発したプロトタイプアルゴリズムや高度大規模コンピューティングインフラ上で活用できるようにしていくとともに,当該年度直前の3月に発生した震災など,現在進行中の課題に対しての適用可能性を検討した.具体的な適用対象については,当初は電力取引問題への適用を初期検討課題とし,その後社会の要請とその時間的変化を十分に考慮して,柔軟に適切な選択をしていくようにした.その一例として,災害に頑健な都市計画や道路網設計などに対して(エージェント)シミュレーション等に基づく多くの既存のアプローチをうまく活用しながら,それらと本手法とを有機的に結合できるようにすることについて準備的な検討を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究室としての運営形態の変更に伴い,一定程度の計画の遅滞が予想されたが,当初の予定に対しては,ほぼ期待した程度の成果を得ることができ,研究の遂行上も特に深刻な問題には陥らなかったことから,おおむね計画通り順調に進展しているとした.
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今後の研究の推進方策 |
研究計画自体に大きな変更の予定はなく,そのような要因となるような問題点についても現時点では特に確認できていないが,震災後に味わった自らの無力感は忘れがたいものであり,大切な公金による研究であることを今まで以上に強く意識して,全力を挙げて研究に取り組む。同時に,社会状況に配慮し,消費電力の大きい機材の使用を控える,あるいは使用時間帯などを適切に調整する,などの配慮を研究遂行上も意識して行いたい.
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