研究概要 |
本研究課題は,分散システムにおける複数の自律的な計算主体の協調動作に関する研究分野であるマルチエージェント・分散協調問題解決の応用と高度化のために,分散制約最適化手法の動的環境への適用と,分散協調アルゴリズムの合成手法の開発を目的とする. 平成22年度においては,変動する環境に追従する分散協調アルゴリズムのために重要な,動的な分散制約最適化手法および,複合的な分散協調アルゴリズムを構成する手法の基礎的な検討を行った.この検討の過程において,特に分散制約最適化手法の構成要素の分析と,それらの要素を合成する方法に重点を置くこととした.この方針にもとづき,分散処理として表現される探索アルゴリズムに含まれる処理単位のデータフローを考慮して,メッセージ交換型の分散処理系を構成する方法を検討した.具体例として,動的計画法および分枝限定法に基づく厳密解法を対象とし,従来の分散制約最適化手法において本質的な,部分解やコストの計算の形式的な表現を整理した.この検討は,今後の研究における分散協調アルゴリズム合成手法の基礎としての重要性があるといえる.さらにこの検討の過程で得られた知見に基づいて,従来の分散制約最適化手法の効率化を提案した.この効率化手法では,前述の分枝限定法と動的計画法を併用する解法の枠組みにおいて,記憶とメッセージのサイズの制限のもとで複数の解を同時に展開する.このような手法は,従来解法を一般化する表現であるとともに,複合的な探索戦略を用いる解法の基礎検討としての意義があると考えられる.
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