研究概要 |
本研究課題は,分散システムにおける複数の自律的な計算主体の協調動作に関する研究分野である,マルチエージェント・分散協調問題解決の応用と高度化のために,分散制約最適化手法の動的環境への適用と,分散協調アルゴリズムの合成手法の開発を目的とする. 平成23年度においては,動的に変化する環境を反映する時系列的な分散制約最適化手法について,各種手法の検討を行った.部分解の継承による出力の変動の抑制,および計算結果の学習と再利用による解探索処理の削減について検討を進めた.また,この過程で得た着想から時系列的な問題の活用方法の一つとして,資源割り当て問題において生じる,エージェント間の不平等な状況を時系列方向に拡散させるための手法を提案した.また,動的・複合的な分散アルゴリズムの生成手法の検討として,平成22年度に調査した分散協調探索アルゴリズムに含まれる処理単位とデータフローを考慮して,疑似木にもとづく一連の分散探索アルゴリズムを構成する方法を再整理した。これにより,従来のアルゴリズムの本質をより簡易に表現でき,アルゴリズムの記述や説明の明解さが向上することが期待される.さらに,資源に関する大域的制約を含む問題を解く解法を含め,各種の分散最適化アルゴリズムを開発した.これと関連して分散制約最適化とは異なる種類の最適化手法の分散処理化についても検討した.特に線形計画問題の解法である単体法を複数エージェントにより協調的に実行するための基本的なデータフローとプロトコルを示した.これらの研究により得られた知見は,今後の分散協調型の最適化手法の生成,統合の検討において一定の意義があると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,より高度なアルゴリズムの生成手法に関する知見を得るための具体的な事例の分析を兼ねて,複数のアルゴリズムを開発することを優先し,一定の成果が得られた.その一方でアルゴリズムのリポジトリ化等,実作業中心の研究については,次年度の総括的内容として適切な規模で集中して実施することが妥当と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
平成22年度に検討した,アルゴリズムの構成要素およびそれらの結合のために必要なデータフロー等の調査と,23年度に事例の分析を兼ねて開発・検討した各種のアルゴリズムから得られた知見をもとに,分散最適化アルゴリズムの形式的な構成手法に立ち返り,特定のクラスのアルゴリズムを対象とした具体的な方法論の確立を目指す.これに伴い,アルゴリズムの構成要素の部品化・リポジトリ化の作業を進める.
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