研究概要 |
本研究は,昨今の著しいデータ取得技術向上を背景に重要となる,数千~数十万次元といった極めて高次元なデータにおける組合せ論的計算を伴うデータ解析において,扱う問題が持つ離散凸性を主とした離散構造を利用する事による,効率的な計算の枠組み構築を目的とする.更に本研究では,開発した枠組みの応用における有用性に関して,実験的な検証を行う. 当該年度の主な研究事項は,以下のようである. (1)前年度に引き続き,離散構造に基づく組合せ論的計算に基づくデータ解析のための方法論体系の構築 (2)具体的な応用に適したアルゴリズムの開発や,応用的に重要となる特殊構造を利用した高速化 まず(1)に関しては,特に(i)サイズ制約下の劣モジュラ最小化,及び,(ii)離散DC計画問題について,各々厳密解を計算するための枠組みの提案を行った.(i)に関しては,劣モジュラ多面体と呼ばれる離散構造に関する理論的研究に基づき,効率的に(多項式時間で)一定の条件を満たす厳密解を計算する枠組みを提案した.また(ii)に関しては,劣モジュラ性と呼ばれる離散構造を用いて,分枝限定法の枠組みの中でこの問題の大域解を探索する方法を提案した.これらの成果は,機械学習分野における最もレベルの高い会議へ論文が採録され(Nagano,Kawahara&Aihara(ICML'11)及びKawahara&Washio(NIPS'11)),学術的にも高い評価を受けた.また(2)に関しては,主に離散凸構造を用いて,慶応大の武田朗子氏との連携による経済データ解析や,また画像処理のための基礎技術(エネルギー最小化)への高速な計算方法を開発した.これらの成果は,離散構造を用いたデータ解析の有用性を示す例として意義のあるものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初に計画した離散構造,特に劣モジュラ性と呼ばれる離散凸構造を用いた一連のアルゴリズム体系の構築が順調に進んでいる.その応用に関しては,当初想定していた遺伝子データに関する検討は十分に進んでいる状況ではないが,当初想定してはいなかった画像処理や経済データ解析などの応用で議論が進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
離散構造を用いたデータ解析のための一連のアルゴリズム体系の構築に関しては,今後も継続して進める.また,その有用性を示すための応用的研究に関しては,当初想定していた遺伝子データ解析も検討を継続する予定であるが,それ以外に関しても視野を広げ,開発してきたアルゴリズムの有用性を示すと思われるものは積極的に取り組んで行く予定である.
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