研究概要 |
通常10年単位の期間を要する航空宇宙機設計のため,1年単位で行える効率性と環境への適合という今後要求される革新性を追求した新たな設計方法論"設計情報学"を創出した。本研究は3本の柱で成立しており,一つは多分野融合最適化手法の高度化,一つはデータマイニングによる設計空間の構造化と可視化の方法構築,一つはそれらを用いた実用最適設計問題への応用を通した方法論の洗練化である。 最も注力した最適化手法の高度化では,2007年に提示されたdifferential evolutionの遺伝的アルゴリズムに対する優位性に関する論文を受け,設計空間上の大域的探査に優れたdifferential evolutionと遺伝的アルゴリズム,設計空間上の局所的探査に優れたparticle swarm optizationizationの3手法を組み合わせたハイブリッド手法を構築し,高々10^2オーダの世代数に於いて優位性を持つ効率的進化計算手法がdifferential evolutionと遺伝的アルゴリズムとのハイブリッド手法であることが提示された。 一方,データマイニングについては,自己組織化マップ,統計学に用いられる分散解析,ラフ集合理論及び決定木をこれまで適用した。その結果,抽出される設計情報には大域的設計情報と局所的設計情報が存在し,自己組織化マップと分散解析では大域的情報が,ラフ集合理論と決定木では局所的設計情報が得られ,各手法の使用方法論と長短所,及び今後の課題が明らかとなった。これにより設計情報学の基礎は構築された.尚,マイニング手法は重要課題な為,日本機械学会内に設計情報学研究会を設置し,2012年夏の年次大会にて特別フォーラムを開催し,次の段階への展開を図るに至ったことを書き添える。 最後の実用最適設計問題への応用では,テスト問題として宇宙科学研究所にて作成されたハイブリッドロケット問題への適用が先ず行われ,実用に耐えうる事が確認された.また,現在数値流体力学手法を用いた大規模問題を新たに定義し,さらなる展開に至っている。
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