申請者は側頭葉でのカテゴリー化の神経機構がアトラクターネットワークの一種である連想記憶モデルに基づいているものだと仮説を提唱し、それを実証するためにニューロン活動記録とデータ解析手法の開発を行う。側頭葉のニューロン集団による始めに大まかな分類が起こり、続いて詳細な分類が起こるような階層的カテゴリー分類の情報処理は、学習によって獲得された可能性がある。このカテゴリー分類の学習過程を調べるために、顔画像を用いた。ヒトの顔画像とサルの顔画像と図形の画像を用いて、サルが顔の画像を注視するタスクを実行中の下側頭葉からニューロン活動を記録した。顔画像は正立画像と倒立画像、さらにサッチャー錯視を起こす目をフリップさせたサッチャー正立画像とサッチャー倒立画像を用いた。個々に記録したニューロン活動を集団として扱い、主成分分析で解析した結果、先行研究と同様始めにヒトの顔vs.サルの顔vs.図形といった大まかな分類が起こり、次に顔の正立、倒立の分類、さらに遅れてヒトの個体やサルの表情と行った詳細な分類に関する情報が処理されることが分かった。また、サッチャー錯視を起こす顔画像を呈示したとき、応答の差が画像呈示後から280ms遅れて現れることが分かった。この結果より、サッチャー錯視の情報処理は下側頭葉以外の領野で行われている可能性を示唆した。これによってどのような顔の画像を提示したら下側頭葉のニューロンがどのような活動をするかの知見をためることができ、神経回路モデルを構成するときに役に立つ。また、本年度は、報酬無報酬のカテゴリーと画像が下側頭葉の隣の領野である嗅周皮質でどのようにして連合しているかを調べた結果が、論文として出版された。
|