研究概要 |
まず,本研究におけるパターンの圧縮・暗号化および認識処理や展開・復号の工程で主要な演算となるランダム射影を飛躍的に高速化および省メモリ化する高効率ランダム射影を実装開発した.パターンの類似度を保存する次元圧縮をシンプルなスペクトラム拡散と高速な直交変換処理で実現しており,画像や音声等の大規模データへの適用を見込める.そこで,この高効率ランダム射影を利用してデータを効率的に分類する算法の設計に取り組んだ.高効率ランダム射影によるパターンの低次元化で類似度計算を効率化し,かつランダム射影の数理で精度を保証しつつデータ数を削減することで,線形分離不可能なデータの分類を実現するスペクトラルクラスタリングの計算を大幅に省力化することに成功した.これにより,大規模計算を要する画像分割や動画像のショット分割,物体の動きの分類への応用を可能にしている.次に,高効率ランダム射影によるパターンの圧縮とスパース正則化により,効率的かつノイズに対して頑健なパターン識別器を提案した.スパース正則化は,テストパターンを簡潔に合成できる少数の学習パターンを特定する効果があるため,いかなる学習パターンとも相関の低いノイズやデータの欠損に対して頑健である.圧縮センシングに利用されるスパース正則化の算法は,信号計測時の圧縮作用素とその随伴作用素を内包するものが多い.ゆえに,学習フェーズでは高効率ランダム射影で学習パターンを圧縮し,認識フェーズでも同様にテストパターンを圧縮計測することで,効率的かつ圧縮センシングと親和性の高いパターン認識技術を設計できる.本研究では更にこのパターン識別法を発展させ,テストパターンが同時に複数のクラスに属すときにそれらを特定する多重ラベリングの機能を実現した.一般物体認識にこの多重ラベリング手法を応用することにより,画像中に混在する複数の物体を同時に認識できることを確認している.
|