研究課題
効率的なパターンの圧縮技術の有効性を実データを用いて検証した.パターンを圧縮したまま情報処理する枠組みを応用して、大規模計算を必要とする医用画像の領域抽出やレジストレーション(画像の位置合わせ)を効率化した.画素の数と等しい次元数を低次元に射影するランダム行列の生成は非現実的であるが、行列の生成が不要である本研究の手法はランダム射影を画像に適用可能にするのみならず、多数の画像を射影して類似性の高い画像を高速に探索可能にした.また、前年度に考案したスパース正則化に基づく多重ラベリング識別器の頑健性を考察し、応用範囲の拡大を試みた.特に、肺音信号からその正常・異常な成分を頑健に分離する信号処理と、分離信号のパターン認識による診断支援の可能性を検討した.肺音は様々な種類の正常音・異常音の混合であり、かつ、高品質な信号の記録が困難であることから、そのパターン認識は極めて挑戦的な課題と考えられてきた.本研究では、圧縮センシングの手法に基づくことにより、そのような肺音信号に対しても頑健に構成音を抽出できることを示した.また、肺音を簡潔に表現できる基底を用意できれば、正常音・異常音を同時に認識できる可能性を実験的に確認した.圧縮センシングの手法による肺音のパターン認識の効率化、頑健化、秘匿化は、有力かつ発展の余地が大きい取り組みであり、本研究の長所を余すことなく活かせるパイロットモデルとして今後も研究を継続する.加えて、本研究では、組合せ最適化問題が信号処理とパターン認識の重要な接点であることを指摘した.すなわち、圧縮センシングにおけるスパース解法は組合せ最適化問題の近似的な解法を提供しており、既知の概念の組合せによって対象を簡潔に説明する組合せ最適化問題がパターン認識の本質である.この観点から、信号処理とパターン認識の両研究分野が相乗的に発展する方向性を探る議論を開始している.
2: おおむね順調に進展している
具体的な応用例(医用画像処理、肺音のパターン認識)によって本研究の手法の長所や新規性が明らかになりつつある.また、数理基盤である組合せ最適化の観点からパターン認識を再解釈する知見が得られ、当初のねらいどおり、本研究が研究分野自体の発展性に貢献する余地を見出しつつある.
本研究の手法の応用・開発(特に医用画像処理、肺音のパターン認識)を継続する.また、パターンを圧縮しないパターン認識の既存技術から、効率化、頑健化、穣匿化された技術を容易に導出できるようにするための数理的枠組み作りを試みる.
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (4件)
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