研究課題
パターンの圧縮と認識の効率化・頑健化を実現する前年度までの研究で構築した基盤の有用性を実データを用いて検証した。まず、肺聴診音のパターン認識の有用性を確認した。肺音は様々な種類の正常音・異常音の混合であり、かつ、高品質な信号の記録が困難であることから、そのパターン認識は極めて挑戦的な課題と考えられている。前年度では、圧縮センシングの手法に基づき肺音信号を構成音に分解できることを示した。更に今年度では、この分解を利用して異常音を検出する性能を評価した。特に断続性ラ音と呼ばれるパルス状の異常音の検出について、低いSN比の条件下においても高い適合率と再現率を同時に達成できることを確認した。これらの検証に加え、大規模計算を必要とする医用画像の領域分割処理やレジストレーションにパターンの効率的な圧縮技術を応用した。画像中の物体を検出する画像分割において画素間の類似性を総当りで評価することを回避するため、予め過分割した小領域と画素の間の類似性を評価する手法を考案した。この手法は類似度行列の次元圧縮の一種と見なすことができ、画像分割の品質を損なうことなく計算量の削減を達成することを確認した。また、高効率ランダム射影による画像の圧縮を事前に施すことにより、複数の画像中の同一の物体について位置を合わせる画像の拡大縮小・回転の量の推定を効率化した。本研究の発展性を確認するため、いくつかの予備実験も実施した。特定のパターン集合の圧縮に特化した辞書を数値的に作成する際、辞書学習用のパターンを予め高効率ランダム射影で圧縮することで計算規模を低減し、パターン認識の更なる効率化・頑健化を見込めることがわかった。また、組合せ最適解の有無によるスパース正則化アルゴリズムの振る舞いの違いから、学習済み・未学習を判定できる可能性を見出した。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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