災害直後から黄金の72時間と呼ばれる短い時間に広い被災地の生存者を探し出す作業は重要でありながら困難を極める。従来の探査レスキューロボットは、音や画像、温度を利用して被災者の探査行動を行ってきたが、広い被災地で出来る限り多くの生存者を短時間で見つけるためには、現在のセンサシステムでは限界があった。本研究では、従来利用されてきたセンサに加えて、申請者が新しく開発した、気体の低濃度領域での検出力、時間分解能に優れる「超音波式高速気体濃度センサ」をロボットに組み込む事で、広い被災地で、短時間に多くの生存者を発見する事を可能にする災害現場サーベイシステムの構築を目的とした。本研究で達成した事を列挙する。 ●感度・時間分解能向上のためのセンサ自動加工系の確立 各種加工装置の購入により精度が必要なセンサユニットの加工がスムースに行えるようになった ●呼吸センサの構築 超小型DCファンや超音波素子を組み込み、ガスマスクと一体化させて呼吸センサを構築した ●制御機構の開発 素子問のマイクロメータ距離調節が必要となるため、微小周波数距離調節機構を作成 ●人体の呼吸過程の計測 従来の呼吸センサでは計測できない高時間分解能を利用し、喘息や気管支炎などの症状を計測 ●遠距離呼吸計測可能性の検証 従二酸化炭素だけでなく人体固有の気体濃度変化-加湿空気-〉二酸化炭素の気体濃度変化の様子をどのくらいの距離離れても計測できるかを、模擬被災地環境を構築して計測した。結果、本センサでは2mほどの距離であれば人間呼吸の呼吸波形計測が可能であることが分かった。 本研究の結果として、英語誌論文2本、IRIS国際学会論文賞、国内学会発表1件の成果がえられた。
|