研究概要 |
本研究の目的は,生体網膜に学び,外界の視覚環境に影響されること無く常に画像認識に適した前処理済み画像を出力できる,小型・低消費電力な順応型視覚センサを開発することである.本年度は,昨年度に開発した,複数の光強度-電圧対数変換特性を備えた光センサを用いて,順応を行う光センサシステムを完成させた.また,取得した視覚情報を空間周波数別に分割して処理を行うための枠組みとして,抵抗回路網を用いた,実時間マルチバンドパスフィルタリング手法を確立した. 順応を行う光センサシステムは,光強度-出力電圧特性を変更できる光センサ,抵抗回路網,FPGA(field-programmable gate array)から構成される.光センサの対数変換特性は,出力画像のエントロピーを最大化するようにフィードバック制御される.また,この光センサ出力に対して局所平均の減算が行われるため,センサの最終的な出力画像は,空間的コントラスト画像となる.局所平均の計算は,抵抗回路網を利用しているため,ほとんど電力を消費することなく瞬時に行われる.本システムは,大きな照明環境変化の下でも適切に画像取得を行った. 一般に,視覚センサは大きな照明環境変化に晒されるため,多くの画像処理システムにとってこの対策は重要かつ困難な問題となる.本研究で開発した順応型視覚センサは,この問題を大幅に軽減するものであり,本センサを用いることで,視覚情報処理システムの信頼性向上や計算コストの低減が期待される.
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