研究概要 |
本研究では,人の全身運動に潜む個性を効率的に捉える新しい情報処理技術の確立を目的としている.この技術を確立することにより,近年実用化への期待が高まる,筋電位を利用して身体機能を補助・強化するロボットスーツや,脳から読み取られる情報を基に代替の身体としてロボットを操作するブレインマシンインターフェースの性能を飛躍的に向上させることが期待される.平成23年度では,包括的な実験計画の第一段階として,ジャイロ式モーションキャプチャを利用し,人動作を実時間かつ高精度で予測する機能の実現を目指し,前年度で開発された個性を捉える情報処理技術の基本的な有効性の検証と,実験を通じて発見される諸処の問題点に関してのアルゴリズム改善を行った.具体的には,人の部分的な動作情報からでも個性を捉えた高精度な予測が実行可能となるように,アルゴリズムの改善を行い,その有効性を確認した.次いで,ユーザ前腕部から計測される筋電位信号を対象として,5種類の手部動作時における筋電位時系列に潜む個性を効率的に捉えるためのアルゴリズムを開発した。予備試験的な評価実験において,1種類の手部動作時の筋電位信号からユーザの個性を捉えることができ,その結果を利用することで,残りの動作の認識精度を大幅に向上できることを確認した.これらの結果より,個性を考慮する情報処理技術の確立という本研究の基本的な目的が達成されたと考えられる.これらの成果に基づいて,国際論文誌1件,査読有り国際会議1件,査読無し国内会議3件の発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度に実施予定であった,「提案手法の問題点の発見と改善」を計画よりも短期間で達成できたため,当初の実施計画において平成24年度に実施予定であった「筋電位信号に対する提案手法の有効性検証」に関する準備を順調に進めることができた,また,予備的な検証実験を実施できたことは,次年度の研究を効率的に実施するために有意義であったと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,本研究課題の最終年度であるため,前年度までに確立されたデータの個性を捉える情報処理技術のさらなる応用可能性を明確化するための年度と位置づける.前年度までに,基盤技術の開発および,モーションキャプチャデータに対する有効性の検証と,筋電位信号に対する予備的な実験検証を完了しているため,次年度では特に,筋電位信号に焦点を絞り,日常生活における一般的な条件下で使用可能とするためにアルゴリズムの改良を実施し,その実用性を大幅に向上させることを目指す.これにより,従来研究において軽視されてきた人の筋電位信号に潜む個性を効率的に捉え,さらにセンサのズレや発汗による問題に頑健に動作を予測する実用的情報処理技術を確立することを目指す.
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