研究概要 |
アクティブオーディションによる音環境理解のための新しいデバイスとして,動物を例に能動的動作可能な柔軟耳介を考案し,その基礎的性質を研究した.また聴覚能の重要な機能の一つである音源定位能を実現する上で能動動作の活用法について考察した.以下に得られた主要成果4点を記す. 1.能動耳介の設計 耳介そのものの動作を実現するため生物を模した柔軟な機構を考え,これを設計・試作した.以下の3で得られた特性データを元に形状や構造について改良を加え,適当な指向性と周波数特性を得た.また,駆動機構を工夫することで自己雑音の少ない集音機構である点も特徴である. 2.能動耳介の運動モデル 複雑な柔軟耳介の動作を扱うための運動学モデルを導出し,実際に開発した装置においてそのモデルの妥当性を検証したところ,良好な結果が得られた. 3.能動耳介の音響特性 耳介の変形に伴う音響特性の変化について,周波数特性の観点から特性を測定し,特に音源定位に重要な指向性と耳介ノッチについて検討した.この結果を用い,必要に応じて耳介形状を改良した. 4.能動的音源定位 バイノーラル移動ロボットと拡張カルマンフィルタを用いた音源定位を対象に,拡張カルマンフィルタ内の推定誤差の分散行列のノルムを評価規範と考え,これを最適化する動作を行うことで音源定位能の改善する方法を提案した.提案法の有効性は数値例によって検証した.提案法は能動耳介の動作を生成する上で不可欠の基礎をなす考え方であり,23年度に継続する予定である.
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