研究概要 |
猫などに見られる能動的に動作する耳介を用いた聴覚機能の実現に向け、1)新しい能動耳介の設計・製作と、その動作計画を目的とした2)音源方向推定における最適な弁別法について研究を行なった。 1)では、22年度の成果を継承し、柔軟構造を有する能動耳介の動作が聴覚特性に影響のあること、およびその関係を実験を通じて定量的に示した。一方、耳介にシリコンゴム以外の素材を用いることで聴覚特性変動を顕著にすることを試み、新しい構造の小型能動耳介システムを開発した(発表予定)。対象とする空間・周波数の特徴を実環境で考察するためこのシステムは人間頭部に合わせた大きさであり、着用することも可能である点で22年度のものに比べ、より現実的な構成となっている。 2)では,1)で得られた聴覚特性変動が非常に複雑なことから、簡単な近似モデルによる動作生成は非常に難しいことが想定され、収録した音データなどシステム毎に調整・適応可能なアプローチの必要性が特に顕著となったことを踏まえ、実際の耳介システムにおいて事前に収録したデータベースから音源方向を推定する方法を検討することとした。具体的には、能動耳介の簡略化システムである可動式の耳介システムをベースに、二つのマイクロホンでのレベル差を特徴量と考えデータ誘導ノルムを用いた音源方向推定法を考案した。また、実際の実験を通じて提案法が、通常の余弦ノルムに比べ良好に音源方向を推定できることを示した。 以上の二つの成果を通じて、能動耳介という新しい聴覚デバイスの実現可能性を建設的に示せた点、またその基本的な特徴と要素技術を提案した点で、本年度の研究は今後に繋がる成果を得たと考えている。
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