従来の雑音抑制システムでは,その性能評価の指標は主として信号対雑音比や目的信号との誤差であり,それらの指標を用いて良好であると示されたとしても認識システムへ入力した際に必ずしも良好な認識結果を得られるとは限らない.ロボット等へ搭載された音声認識システムに雑音抑制システムを付加する場合には,認識率の向上が目的となるため,認識率を指標とした最適化システムを用いることにより,より効果的な結果を得ることができると推測される. 本研究では、この目標の下、前年度までに、認識機構が雑音抑制システムのパラメータ最適化の指標となりうることを理論、実験双方の面から検討、確認してきたが、実利用のために必須となるパラメータの自動最適化手法について検討が不十分であった。本年度は、雑音抑制機構処理と音声認識の統合や小型ロボット搭載のためのソフトウェア開発に加え、雑音抑制機構の実環境での利用を目指し、パラメータの自動最適化手法について検討した.提案手法ではパラメータの自動決定の際に焼きなまし法を用いることで認識率が局所的に向上しているようなパラメータへの収束を防ぎ、大域的に良好な認識率となるパラメータを自動的に決定することが可能となる.本年度は音声認識率と同様にパラメータが局所最適値に決定されてしまう場合のある相関係数を用いたパラメータ決定の手法に対して提案手法を適用し、その有効性を確認した。また、その研究成果を海外で開催された国際会議において発表した.
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