研究概要 |
初年度に開発した高速度プロジェクタカメラシステムを複数組用いて,運動中の物体の表面形状を全周から計測する方法論を研究した.初年度の計画変更に伴い,距離計測に必要となる対応点計算に2進符号化コードを利用することによって,高精度かつ高速度の全周計測装置を構築することに成功した.その一方で,申請時に計画していた,DLPプロジェクタの高周波ノイズを用いた方法に関しても並行して研究を進め,研究成果を関連分野で最も競争率の高い国際学術雑誌(International Journal of Computer Vision)で発表した.申請時の計画(4)では,複数のプロジェクタカメラシステムの組み合わせを提案しており,実際には2組を用いるシステムを構築した.カメラとプロジェクタが互いに向かい合うように配置することによって,申請時の計画で懸念していた,投影光の干渉はほとんど観測されないことが明らかになった.そこで当初計画していた光源分離の手法の研究は省略し,以降の計画に注力した.計画(5)で挙げた,複数のGPUを用いた並列計算手法の研究に関しては,実際に8つのGPUコアを持つ計算機を構築して実験を行った.初年度に開発した並列動的計画法のアルゴリズムを改良したところ,コア数に比例してほぼ線形に速度が向上することを確認し,期待した以上の性能向上を実現できた.研究成果を,欧州の主要な学術会議であるBritish Machine Vision Conference(BMVC)2011で発表した.計画(6)で挙げた動作解析の応用に関して,実際に人間の手の動作,顔の表情,全身運動などを計測し,人体の表面形状の時系列データを取得(パフォーマンスキャプチャ)した.しかし,2組の計測システムの組み合わせでは,計測対象の姿勢によって必ずしも十分な計測範囲を確保することができ無いことが判明した.また,得られたデータを人間工学的な側面から解析するには時間が不足しており,当初計画していた運動特性の解明,動作戦略の分析,作業効率の評価は将来課題として残った.本研究課題では,計測技術の研究に焦点を当てたため,計測後のデータ処理に関しては手付かずである.今後,動作解析のための計測データベースを構築するために,ノイズ除去,遮蔽の検出などの,形状処理の研究が必要であろう.
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