研究概要 |
本課題は,異種複数のセンサを統合した知覚系の設計の問題に対して,従来は各センサの認識処理を先に行う「認識後に統合」の手法が主流であるのに対し,統合をより早期に行う「統合による認識」のアプローチを提案し,有効性を確認することを目的としている.このアプローチにより,従来は各センサの個別の処理で失われていた,異種センサの信号間の相関関係を利用することができる. H23年度は,人が歩く様子をレーザレンジファインダ(LRF)で計測して足の動きを求め,同時に人が携帯する加速度センサで計測して歩行に伴う体の振動を求めることにより,得られた異種センサの計測データベースに対して信号の解析を進めた.両者の信号の相関関係に注目することにより,ユーザが携帯する加速度センサの情報から,LRFの情報中からその人の足の移動の情報を対応づけ,歩いている場所を特定する問題を解くことができることを示した.しかし,信号の相関関係は安定して高い部分と不安定な部分が見られるため,従来の平均的な相関解析の手法には問題があることが分かった.これに対して,両方の信号に特徴的なリズムに注目して局所的な相関関係を抽出する手法を提案し,より安定した相関関係を求められることを示した.多数の人が歩くショッピングモールにおける実験で検証し,数秒間の計測を用いることにより,ユーザの歩いている場所を正しく検出できることを実証した.提案した手法を用いることにより,携帯電話に搭載された加速度センサを用いて,個人を特定した位置追跡を実現可能である. 上記の結果を,国際会議International Conference on Pervasive and Embedded Computing and Communication Systems(PECCS 2012)(full paperとしての採択率17%)で発表し,best paper award(最優秀論文賞)を得た.
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