本年度は、まず歯茎ふるえ音発声時における舌の動態観測のために、本研究で開発されたMRI高速撮像技術を応用した。これまでは正中矢状面のみのMRI撮像であったが、今回はさらに複数の矢状面でMRI撮像を行った。これにより舌の運動が3次元的に計測され、歯茎ふるえ音発声時の舌尖の可視化がなされた。この成果は、複数断面による声帯撮像の手法への適用が可能であり、声帯振動の動態観測・運動の解明への応用が今後の目標である。 また、本研究で作成した喉頭コイルを用いた喉頭付近のMRI撮像を引き続き行った。その結果、高い信号雑音比でのMRI撮像が実現されたことを確認した。続いて、本研究で提案しているMRI高速撮像法による声帯の撮像を行った。声帯撮像のための撮像断面の位置決めや、MRI撮像と声帯振動の位相の同期について開発を行い、それらの精度を上げることが出来た。しかし通常のMRI撮像で用いられる解像度で声帯の形状を捉えるには不十分であり、さらなる解像度向上、信号雑音比の向上が今後の課題である。 さらに、本研究で開発されたMRI高速撮像技術の発展的研究として、発話器官の観測のためのsynchronized sampling method法によるMRI動画撮像法の画像改善のために本技術を応用した。MRI撮像と発話動作の同期が必要であるが、今回はスペクトルサブトラクション法による雑音抑圧と、母音のフォルマント等を利用した。その結果、画像のモーションアーチファクトが軽減され、本技術の有効性が示された。
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