昨年度までに得られたモデル予測制御と接触モード切り替わり境界の推定結果を組み合わせた動作生成法を実機に適用するため,ロボットシステムを構築し,評価を行った.実機ロボットを,多自由度ロボットアームと複数の指からなるハンドにより構成し,アーム部分とハンド部分を制御用PCにより同時に制御する制御系を構築した.構築された実機マニピュレータ・ハンドの形状を再現したシミュレーションにおいて,望ましい接触モードを維持した物体回転操作が可能であることを確認した.アーム・ハンドおよび物体を視野におさめる位置にカメラを設置し,視覚情報から物体の位置および姿勢を10[fps]で計測可能とした.構築された実機実験システムによる検証の第一ステップとして,シミュレーション結果を実機ロボットに適用し,オフラインでの学習結果を利用して実機での物体操作を行った. また,提案する物体操作方法の適用対象を広げるために,多関節の両腕を有するヒューマノイドロボットによる抱え上げ動作におけるモデルの事前知識を要しない動作学習法を提案・実装した.具体的には,ヒューマノイドロボットと机上に置かれた物体とを含んだ動力学シミュレーションを構成し,その中で物体を抱え上げる動作を種々行わせ,物体の滑りにより抱え上げ動作が失敗する状況を事前にデータとして収集し,この観測データのみから望ましくない滑りの発生を避けるための制御則を構築し,シミュレーションにおいてその有効性を確認した.
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