本年度は、照明光色の変化に伴う液体の色知覚変化と物体表面の色知覚との比較を行った。視覚刺激として、透明物体と物体表面を設定した。透明物体としては、直方体の容器に入った液体を、ある照明光色で照明した合計19種類の液体を採用した。物体表面としては、液体とおおよそ同じ測色値(輝度、色度)を持つマンセル色票を採用し、液体と同じ大きさとした。被験者の課題は、液体と色票に対して、エレメンタリーカラーネーミングによりカラフルネス(色みの割合)と色の割合、さらに、透明度をマグニチュード推定法により評価することであった。 被験者全員が、全ての色票の透明度を0%と応答した。Schultzらの色恒常性指数の導出方法に基づいて、両刺激に対するエレメンタリーカラーネーミングの応答から色恒常性指数を導いた。色票に対する色恒常性指数は0から1の範囲を示したが、液体の場合は、全応答の18%が負の色恒常性指数を示した。また、透明度が高く判断される場合は、液体は負の色恒常性指数をとり、カラフルネスが低下する傾向が示された。液体とその背景の輝度や色の差と透明度との間に相関があることから、液体の色の一部が背景色の属性として知覚されることが、カラフルネスの低下の原因になっていると考えられる。
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