研究概要 |
本研究の特色は,生体認証にその有用性にもかかわらず研究か進んでいない「耳介」を用いることにある.耳介のパターンは個人により異なり,かつ指紋や虹彩より大きいため,機器に接触せずに遠くからでも個人を識別できる可能性がある.この利点を利用した個人認証システムを作成するために,本研究では首を左右に振るないしは傾けたときにおこる耳介の角度変化にロバストな耳介認証システムを構築することを目的とする.この耳介認証システムを「検出」と「認証」とにわけたとき,平成22年度は概ね「認証」に関する研究をおこなった[学会発表7件]. (1)申請者他の研究で,指紋認証における「マニューシャ」のように,ひだとひだが交わる点(対耳輪前脚,対耳輪後脚,対耳輪,珠間切痕,前切痕,等)を特徴点にとると個人の識別率が高いことが分かっていた.この知見を発展させ,本研究では耳介の角度変化に伴って,各特徴点の見え方がどのように変わるか,識別率がどのように変わるか検討した.実験にあたっては,正確な角度で撮影されたHOIPデータベースを利用し,角度変化に頑健な特徴点がどこか網羅的に調査した. (2)申請者他の研究で,XM2VTSの121人の画像(首を上下に最大31.1゜,平均13.1゜振った角度変化)データでは,Gabor Jetに独立成分分析と判別分析を適用した特徴量を利用した場合,99.4%のrank 1認証率が出ることがわかっていた.この結果を発展させ,首を上下に振ったときだけでなく,左右に振ったり傾けたときの角度変化への対応を詳細に検討した.特に角度変更後のGabor Jetを変更前のものから計算する手法を利用し,複数の角度からの撮影に対応するデータを生成したうえで,このデータに判別分析を適用し,様々な傾きを含む個人のクラス情報の構築を試みた.このクラス情報を利用した判別分析から得られる識別率が,実際に角度変化した被写体のGabor Jetをクラス情報とした判別分析の識別率にどこまで近づくかを明らかにした.
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