研究概要 |
客観的データ解析に人間心理や情報の質を組み込んだ,最適生産量決定に関する新たなリスク管理手法のより広範囲への適用可能性を高めるため,本年度は,生産量管理システムを構築する上で重要な要素となる,資産配分モデル,在庫理論,輸送路などに現れる最短経路の最適化など様々な要因に対し,不確実・不確定状況下でのリスク制御モデルを構築し,その解法アルゴリズムを提案してきた.特にサプライチェーンにおいて非常に重要なルートやライン設定の基本となる最短路問題に対しては,確率現象や情報の質を考慮し,それらに起因するリスクを回避するためのシンプルかつ有効な数理モデルの構築が完成し,解法アルゴリズムもできるだけ高速でかつロバスト性を有する手法が開発された.これにより,不確実・不確定性に対するリスク管理に主眼を置いたネットワーク計画問題を,サプライチェーン全体の最適化へ結びつけることが可能になったと考えられる.また最適生産決定の基盤となる資産配分(ポートフォリオ選択)問題に対するリスク管理手法の研究では,昨年度までにパラメータを推定した場合の手法は確立されていたため,特にパラメータ推定部分の改良を行い,情報の質に対する数理評価のための有効手法として,包絡分析法やファジィ推論法といった既存に有効とされている手法と本研究で開発した手法との融合を行い,様々な状況における資産配分のリスク管理が可能となった.また,これらの資産配分問題を含むクラスとして存在する,二次錐計画問題に対し,できる限り厳密解を求めることが陽に可能な手法の開発も行い,本研究の数理モデルの解析的評価に利用する基礎を構築した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生産量を決定する,サプライチェーン内の様々な個々の問題に対するリスク管理手法は,資産配分問題のみならずネットワーク計画に至るまで,ほぼ確立されつつあり,当初の想定よりも広範囲の数理モデルを包含できる予定である.また次年度でそれらを有機的に統合する手法の開発が完成すれば,当初の目的が達成可能である.
|
今後の研究の推進方策 |
個々のリスク制御を考慮した最適化モデルを統合するためのネットワーク構築を行う.具体的には,サプライチェーン内の全てのシステムを統合する観点から,ネットワーク計画問題の重要な問題である最小全域木問題を構築し,その問題に不確実要因として確率現象が,不確定要因としてファジィ要素を加味した場合の,リスク管理モデルを構築する.その際に,実社会で広く活用されることを念頭に置くため,確率・ファジィ要因を考えながらも,できるだけシンプルな形でリスク管理モデルを定式化し,解法アルゴリズムも既存の有効な手法をうまく組み込むことが可能なものを開発する.
|