研究課題/領域番号 |
22700235
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
立野 勝巳 九州工業大学, 大学院・生命体工学研究科, 准教授 (00346868)
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キーワード | ヘラチョウザメ / 味蕾細胞 / 確率共鳴 |
研究概要 |
本研究の目的は、ヘラチョウザメ、およびマウズの感覚器官に関する生理学的知見に発想を得て、センサシステムを開発することにある。この目的を達するために、平成23年度は、マウス味蕾細胞に発想を得た神経ネットワークモデルによるセンサ入力の符号化に関する研究と、微弱な電気刺激に対する電気受容器をもつ魚の行動に関する研究と、電気受容感覚の仕組みに発想を得た信号検出回路の開発を進めた。結果は次のとおりである。 マウスの味蕾を構成するII型細胞とIII型細胞のネットワークに発想を得た神経ネットワークの数理モデルを作成した。数個のII型細胞モデルと2個のIII型細胞モデルから成るネットワークモデルを用意した。提案回路は、センサ入力信号の質と強度を神経パルスの同期の程度と発火頻度として符号化する。 ヘラチョウザメが入手できなかったため、代用となる電気受容器を持つほかの魚として、グラスキャットフィッシュについて実験を行った。結果として、微弱な電気刺激に対して、電気受容器を持たない魚(ヒメダカ)は逃避行動を起こさなかったが、グラスキャットフィッシュは避けるような行動を起こすことを確認した。 工学的な側面からヘラチョウザメのような索餌行動を理解する方法として、被食対象となる小魚(ヒメダカ)が周囲に発する電位(生体電位)を測定し、その生体電位を確率共鳴現象により検出する回路を作成した。ヒメダカの発する生体電位は、周波数が約5Hzで、振幅が数十μVオーダーであった。微弱で周期的な電位振動を検出する方法として、確率共鳴が有効である。増幅回路とシュミットトリガ回路の組み合わせにより、ヒメダカの生体電位を検出することができた。 味蕾細胞ネットワークに発想を得た神経ネットワークの成果については、国内学会および国際会議において口頭発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
判断の理由は、センサ情報を神経パルスパターンに符号化する神経ネットワークモデルについて成果を発表していることや、ヘラチョウザメの代用となる魚が確保できており、行動を記録できていること、である。また、工学的なアプローチも順調であることが挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
マウス味蕾細胞の味覚センサと魚の電気受容器の知見を融合させたネットワーク型センサの開発を進めるために、行動実験からのアプローチと数理モデルからのアプローチと工学的アプローチを並行しながら進める。具体的には、センサ入力信号のフィルタリング回路に関する研究、電気刺激に対するグラスキャットフィッシュの行動実験、そして、小魚の生体電位を非線形手法により検出し、探索する回路の研究に取り組む。
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