研究概要 |
本年度は,区間集合を用いた遺伝的ルール選択の並列分散実装を行い,ファジィ集合を用いたときと同様に,識別性能を改悪することなく計算時間を大幅に短縮できることを明らかにした.また,条件部集合の組合せ最適化を行うファジィ遺伝的機械学習手法に並列分散実装を適用した.部分データ集合の交換操作により,非並列非分散実装よりも汎化性能の高い識別器が獲得できることを数値実験により明らかにした.これは,部分データ集合の交換により,個体群の多様性が維持され局所解に陥らず,非並列非分散実装よりも探索が行われるためである.さらに,遺伝的操作の一つとして部分個体群間での移住操作を導入し,その有効性を検討した.数値実験結果から,部分データ集合と最良個体の移住を同時に行う場合,移動方向が同じであれば,部分個体群中の多様性が失われ,汎化性能が改悪することがわかった.逆に,部分データの移動方向と個体の移住方向を変えることで,汎化性能が改善することを明らかにした. 進化型多目的最適化手法の並列分散実装として,NSGA-IIを利用したが計算時間の大幅な現象は起きるものの性能の改善は得られなかった.また,他の遺伝的機械学習手法の並列分散実装として,OIGAを利用した場合,4種類中3つのデータで性能の改善が確認できた.数多くの機械学習手法が提案されているので,様々な手法への適用を行い有効性を検証する予定である. 本年度は,並列分散実装の応用例として,クラス間のバランスが異なるImbalanceデータへの適用も試みた.具体的には,多数派クラスのパターンのみを分割し部分データ集合を作成し,個体群の分割と部分データ集合の交換を行う方法である.動作確認実験において,性能改善が見込める結果が得られたため,来年度引き続き有効性の検討を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ファジィ遺伝的機械学習に並列分散実装を適用することで,計算時間の大幅な短縮のみならず,獲得された識別器の汎化性能の改善も可能であり,その理由がほぼ明らかになってきた.現在は,様々なパラメータで確認実験を行い,英文論文誌への投稿を行っているため,おおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,ベンチマーク問題の数を増やして実験を行い有効性の検証を行う.進化型多目的最適化への適用に関しては,期待される改善が得られていないため,探索アルゴリズムの改良や他の進化型多目的最適化手法の適用を考えている.Imbalanceデータへの適用という申請段階では気づかなかった拡張がみえてきたため,こちらも研究を進めていく予定である.現実世界のデータは,クラス間に偏りのある大規模なものであることも多く,この拡張は今後の研究ラインの一つになると思っている.
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