研究課題/領域番号 |
22700242
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研究機関 | 沖縄工業高等専門学校 |
研究代表者 |
佐藤 尚 沖縄工業高等専門学校, メディア情報工学科, 助教 (70426576)
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キーワード | 動的認知主体 / 内部ダイナミクス / Simple Recurrent Network with Self-Influential Connections / ルールダイナミクス / Multi-Game / Minority Game / N-person Iterated Prisoners' Dilemma Game / ミクロマクロ・ループ |
研究概要 |
本研究は、ミクロレベルの動的認知主体が持つ内部ダイナミクスと、マクロレベルで見られるルールダイナミクスとの循環的相互作用、すなわち、ミクロマクロ・ループを構成する2つのレベルの関係性を明らかにすることを目標としている。ここで内部ダイナミクスとは、ゲーム理論や経済物理学で簡略化されることが多い、主体の行動決定等に影響を及ぼす内部状態(1)自律的変化のことである。また、ルールダイナミクスはマクロレベルで創発する制度や規範等のルールの動的な変化を指す。 平成22年度に行った研究では、異なる国や地域が相互作用することで、それぞれが混乱せずに安定化するためには、主体が他の文化や制度などを現地で直接学ぶことを通してそれらを定期的に主体の内部に内在化させることが必要であることが実験結果から示唆された。 この研究成果を踏まえ、平成23年度の研究では、主体の内部に内在化した複数のルール同士の相互作用によって、主体たちの行動がどのように変化し、更にそれらの行動から形成されるルールダイナミクスがどのように影響されるのかを調べた。本年度の研究目的を達成するために、異なるゲームを主体たちに同時にプレイさせるマルチゲーム・モデルを提案した。ゲームとしては、マクロダイナミクス(ゲームの勝者の手の時系列パターン)が複雑化しやすいMinority Game(MG)と単純化しやすいN-person Iterated Prisoners' Dilemma Game(NIPDG)を採用した。実験より、複雑なマクロダイナミクスが創発する際には、ストレンジアトラクタに似た形状で表きれる複雑なルールが主体に内在化することが分かった。更に、主体に内在化したMGとNIPDGのルール同士の相互作用によって、MGで形成されるマクロダイナミクスであっても単純な低周期となり安定化することが確認された。 これらの結果から、複雑な制度や法とそれらより単純なルールを同時に順守させるような制度設計をすることにより、社会全体としての安定化に繋がる可能性があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究計画では、6月までにマルチゲームのマルチエージェント・シミュレーション実験およびデータ解析を実施し、12月までには国内学会での発表、3月までには国際会議での発表、および国際学術誌への論文投稿を行うとしていた。下記「13.研究発表(平成23年度の研究成果)」からも分かる通り、国内学会と国際会議でそれぞれ研究発表を行なっている。また、現在、国際学術誌に投稿した論文が査読中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度は、想定していた時期に研究結果を出すことができず、国内学術誌へ論文を投稿するタイミングを逸してしまった。しかし、平成24年度に実施予定の研究は、いわば、平成22年度と23年度のそれぞれで行った研究のハイブリッド化であり、2年分の研究資産・成果があるため、研究とそれ以外の業務の更なる効率化を図り、研究をより強力に推し進めることが可能である。国内学術誌への論文投稿も行い、国内でのマルチエージェント・システムを用いたルールダイナミクスに関する研究へ貢献できるよう、最大限努力する。
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