本研究では協調的情報探索の効果的な支援方法について認知的・技術的側面から取り組んだ。特に集団が検索作業中に共有する知識情報を観察し、その状況に適した検索戦略の選択や提案を対話的に行う仕組みを調査することを目的とした。平成23年度は、前年で得た知見を基に設計した協調的情報探索に関するユーザスタディの会話データの書き起こしや、予備調査を含めたデータ分析を行い、協調的情報探索における効果的な支援方法について認知的・技術的側面から考察した。 考察の結果以下のような知見が得られた。一つ目は、協調的情報探索研究における評価タスク設計の重要性である。旅行計画作成などの協調的情報探索が頻繁に行われる文脈では評価タスクの作業時間をホームページ探しなどの一般的な情報探索よりも長めに確保することが、認知的洞察を得る上で必要であることが分かった。集団における会話データから、旅行計画作業(上位タスク)における検索作業(下位タスク)の割合が小さく、効果的な支援方法を考える上で、一般的な情報探索研究よりも更に上位タスクの理解が重要になってくることが示唆された。 二つ目は、協調的情報探索における役割分担の効果である。協調的情報探索環境に役割分担を明示的に導入することで、集団内のコミュニケーションに効果的な影響を与えることが分かり効果的な支援方法に利用できると考えられる。また役割分担の型によっては収集される情報の網羅性に影響を与える可能性もあり、支援技術の設計時に考慮する必要がある。
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