平成24年度も本研究が課題とする東洋学古典文献学のための研究情報共有基盤を実現するためのWebコラボレーションシステムの開発を継続した。前年度の利用・評価を経て改良されたシステムのうちの入力系システムに関しては、本年度も研究者の利用に供する一方で、表示システムに関してはSAT大蔵経テキストデータベースにおいてその機能の一部を提供した。とりわけ、英訳大蔵経と大正新脩大藏經との文章単位でのリンク付け作業についてこのシステムを集中的に活用しフィードバックを得た。東洋学古典文献においてはテキストの区切りということ自体が解釈の対象であることを再確認するとともに、英訳という一つの安定した解釈系を持ち込むことでその解釈の揺れに対して暫定的だが一貫した区切りをもたらし得ることを明らかにした。そして、このシステムによって作成されたアノテーションが様々な形で活用可能であることも明らかにすることができた。このシステムに関する研究発表は、情報処理学会人文科学とコンピュータ研究会において行い、『Literary and Linguistic Computing』に論文として掲載された。予定していたじんもんこんシンポジウムにおける研究発表については応募者が大会プログラム委員長の任を引き受けたため断念した。また、このシステムの開発において得られた知見をハンブルク大学・東京大学との共同プロジェクトであるIndo-Tibetan Lexical Resourceにおいても適用し、国際的な仏教学研究者のコミュニティが利用するWebコラボレーションシステムを開発した。この成果については、Digital Humanities 2012において研究発表を行った。
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