1.ガバナンス論における地域SNSの理論的位置づけの整理とモデル化 地域SNS(Social Networking Service)が志向する多主体連携による地域社会のガバナンス論と、電子行政のオープンガバメント論の関係を整理した。日本の文脈では、政府が情報公開等を進めるだけでなく、公開された情報を活用し新たに公共を担う企業や社会組織の活動の活性化が求められる。またLin(2002)らの議論のように、ソーシャルメディアは社会関係資本形成や官民協働の場として機能すると考えられる。地域SNS、Twitter、Facebookが地域の政治関係者にも活用され始めている状況の把握や、住民が選挙以外の方法で地域社会の運営に参加する取組み(静岡県掛川市やデンマーク等)についての訪問・文献調査も行った。 2.具体的な活性化手法と運用上の工夫の収集・事例集化と因果関係の分析 現地訪問調査や地域SNSへの参加によって収集した、優れた地域活性化手法やSNS運用上の工夫、それらの因果関係分析等の情報を、地域SNS研究会のウェブサイト、SNS、合宿、地域SNS全国フォーラム等を通じて各地の運営者等に紹介した。また全ての地域情報をSNS内部に留めず、様々なツールを組合せ、目的に応じて広域に発信したり別のコミュニティに届けたりするという観点から、地域SNSとTwitterやFacebook等、大手サービスとの連携のあり方について各地の取組みを調査した。地域SNS研究会の情報発信でも実験的なサイト間連携を開始した。 3.地域SNSの多様性を反映した類型と評価指標の改良 筆者が作成した地域SNSの5類型(「対象地域の広さ」と「紐帯の強弱への志向」による分類)に基づき、運営目的や運営方針、機能、利用状況データ等についてのアンケートを、45kカ所の地域SNS運営者と748人のユーザーに行い、全国の地域SNSの運営状況を俯瞰的に把握した。その結果の一部は総務省との共同研究として2010年版「情報通信白書」に掲載されている。詳細な分析とそれを踏まえた活動評価指標の検討は次年度に引き続き行い、論文化する。
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