2012年度は本研究計画の最終年度であるが,来年度以降も継続して研究することを見越して,以下の2点について研究を進めた. ・ロボットのワーキングメモリの中身を映像として伝える際の映像効果の評価 ・ワーキングメモリに保持する注目対象取得のための視覚的注意モデルの改良 前者については,ワーキングメモリの中身を映像(スライドショー)としてただ表示しただけでは具体的な処理内容が伝わりにくいことから,ロボットの処理内容を伝え分けるための映像効果(トランジション効果)について調査した.ロボットの内部処理や評価する映像効果を変えながら評価実験を3回実施したが,最終的に,ロボットの内部処理として意図・予期・観察・思考の4つを挙げ,それらが移動性と曖昧性の有無の組合せによる4つの映像効果と概ね対応することが実験から示唆された. 後者については,背景が複雑なシーン(一般的なシーン)からワーキングメモリに保持すべき対象を見つけ出す際,従来の視覚的注意モデルでは遠い背景にある物体にも注意が向いてしまうという問題があり,これを改善するために奥行情報を利用した手法を提案した.我々人間は,通常,現在の注視点と近い奥行距離にある物体へと注意を移していく.しかし,二次元情報しか用いない従来の視覚的注意モデルでは,現在の注視点の奥行情報に関わらず,顕著度の高い(目立つ)領域の上へも注意を移す.提案手法では,注視点の奥行との距離に反比例した顕著度を各領域に与えることで,注視点と奥行が大きく離れた領域に注意が向きづらくなるようにした.実験では,探索・組合せ・タスク無しという3つの状況において人間の視線移動パターンを調べ,提案手法によってそれが概ね再現できることを示した.
|