研究課題
本研究では、今現在の自分の状態を標識・保証する自己モニタリング機能を、運動動作のモニタリングに限定せず、感覚知覚体験という観点から捉えるべく検討を進めている。まず、眼前の視対象が時折主観的に消失する現象を用いて、物理的な情報の変化を自身の感覚器官を通して体験する状況と、物理的には存在しない主観的な情報の変化を体験する状況(錯視)を監視・区別する能力を検討した。その結果、物理的に起こる情報の変化が急激かつ顕著なものであることが、物理的に存在する情報を体験しているか否かの区別を容易にする可能性が示された。また、眼前のゆるやかに運動する物体を見ているという主観的体験は、低次の感覚領野(視覚第1野等)の活動状態や感覚情報処理とは必ずしも対応していない可能性を新たな測定法で示した。具体的には、中心部と周辺部で運動方向が異なる赤色と緑色の2つのランダムドットパタンを重ねて、赤と緑のパタンを反対方向に運動させると、主観的には中心と周辺のいずれにおいても同色のドットが同一方向に運動しているように感じられる主観的誤結合現象を用いて、誤結合時の色随伴性運動残効が主観的体験と物理刺激のいずれに対応して得られるかを検討した結果、提示された物理刺激に対応した残効が得られた。これらの知見から、急激かつ顕著な物理情報の変化が提示されない限りは、物理情報自体の受容・処理はある程度正確になされていても、物理刺激を受容している今現在の自分の状態を把握することは困難であることが推察される。
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