研究概要 |
平成22年度は、6-7ヶ月児30名を対象に、2つの実験をおこなった。実験は、静岡県袋井市内の保健センターにおいて実施した。 実験1は、物体(ボール)の動きの原因についての推論に関する慣化-脱慣化法による実験であった。この実験では、小型の舞台を作成し、この舞台上で刺激事象を実演し、それに対する乳児の注視反応をノートPC上で記録、分析した。まず、慣化事象では、舞台の左右の端にある遮蔽物の背後からボールが転がり出し、舞台の中央に停止した。被験児がこの事象に慣化した後、2種類のテスト事象を提示した。テスト事象では、まず、遮蔽物が倒され、その背後が提示された。Box side事象では背後に箱が提示された遮蔽物から、Hand side事象では背後に手が提示された遮蔽物からボールが転がり出し、舞台の中央に停止した。乳児は物理的に自然な事象よりも、起こり得ない事象を選好注視することが確かめられている。したがって,本実験の被験児が,ボールの始動に関する因果性を認識していれば、テスト段階において、Hand side事象よりもBox side事象を選好すると考えられる.そして、分析の結果、全体として被験児がBox Side事象をHand Side事象よりも長く注視したことが示された。 実験2では、他者の手伸ばし行動の目標指向性の推論に関する実験をおこなった。この実験では、被験児に対し、実験者が2つの玩具のうちの1つに手を伸ばすが届かず空中をつかむ動作をする、という事象を実演で提示した。その後、同じ玩具のセットを提示したときの被験児の模倣行動を観察した。その結果、被験児は、実験者がつかもうとしていた玩具をつかむ傾向を見せた。先行研究によれば、この反応は他者の目標行為を推論し、それを再現したと解釈できる。 今後も同様の実験をさらに多くの被験児を対象におこない、2つの実験の結果の相関関係を検証していく。
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