平成22年度に引き続き、6-7ヶ月児を対象に、2つの実験をおこなった。実験は、静岡県袋井市内の保健センターにおいて実施した。平成22年度と併せて、約60名の乳児の参加を得た。 実験1は、物体(ボール)の動きの原因についての推論に関する慣化-脱慣化法による実験であった。小型の舞台上で刺激事象を実演し、それに対する乳児の注視反応を記録、分析した。慣化事象では、舞台の左右の端にある遮蔽物の背後からボールが転がり出し、舞台の中央に停止した。テスト事象のBox side事象では背後に箱があることが明示された遮蔽物から、Hand side事象では背後に手があることが明示された遮蔽物からボールが転がり出した。乳児は因果的に不自然な事象に驚いて選好注視することが知られており、本実験の乳児においては、Hand side事象よりもBox side事象を選好すると期待される.昨年度分と合わせた分析の結果、全体として乳児がBox Side事象をHand Side事象よりも長く注視したことが再確認された。 実験2では、他者の手伸ばし行動の目標指向性の推論に関する実験をおこなった。乳児に対し、実験者が2つの玩具のうちの1つに手を伸ばすが届かず空中をつかむ動作をする、という事象を実演で提示し、続けて同じ玩具のセットを提示したときの模倣行動を観察した。今年度は、実験者が玩具の1つを実際につかむ事象を提示する統制群の実験もおこなった。その結果、実験群の乳児は、実験者がつかもうとしていた玩具をつかむ傾向を見せた。先行研究によれば、この反応は他者の目標行為を推論し、それを再現したと解釈できる。 さらに分析を進めたところ、実験1においてBox side事象への選好が大きい乳児ほど、実験2のパフォーマンスがよかったことが示唆された。これらのことから、実験1と実験2で確かめた2つの因果的認識に何らかの関連があることが示されたといえる。
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