研究概要 |
本研究ではヒト前頭眼野(hFEF)における注意処理と行動制御のメカニズムについて、機能的MRI(fMRI)実験及びそのデータを用いた多重ボクセルパターン解析(MVPA:いわゆるfMRIデコーディング)を用いて解明し、従来モデルよりもさらに効率的で行動制御との関係を重視した視覚的注意のモデルを提案することを目指した。具体的には「前頭葉内の神経表象→頭頂葉内の神経表象」なる一対一対応関係が存在する、という作業仮説の検証を行った。平成23年度は、まず前年度に実用化した偏グレンジャー因果性解析による前頭葉⇒頭頂葉なる脳内方向性ネットワークの可視化手法を具体的に査読論文として出版した(Ozaki,PLoS One,2011)。その後、「前頭葉&頭頂葉における注意の神経表象」を同定する「hFEF(ヒト前頭眼野)におけるretinotopic area同定のためのlocalizer実験」+「hFEFにおける視覚的注意処理・行動制御(タイミング)の関係性を同定するためのメイン実験」+「hFEF内部のretinotopic areaにおけるfMRIデータに対するMVPA」を実施し、被験者7名分のデータを得て偏グレンジャー因果性解析による作業仮説検証を行った(実験課題の難易度が高く、最低目標とした12名以上の完全課題遂行者が得られなかった)。このデータ解析ではMVPAによってより信頼性の高いhFEF内部のretinotopic areaを同定し、それらを偏グレンジャー因果解析におけるノード(fMRIデータにおいてはregions of interest:ROI)として指定した。しかしながら、得られた偏グレンジャー因果性解析グラフが部分的に作業仮説に合致する一方で他の部分は合致しないなど複雑な様相を呈し、作業仮説の真偽を確定させることはできなかった。
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